あらすじ

放課後、忘れ物を取りに四階の美術室へ向かった梓は、静まり返ったはずの部屋から聞こえる“パキ…パキ…”という異様な音に足を止める。夕日に照らされた鏡の展示スペースだけが赤く浮かび上がり、誰もいないはずなのに、鏡には梓そっくりの影が映っていた。しかしその“梓”は、自分の頬を指でひっぱり、乾いた粘土のように皮膚を割りはじめる。鏡の中の梓は、本来の顔を剥ぎ落とし、どこか嬉しそうな笑顔の“別人の顔”に変わっていく。 やがてその鏡像は、ガラスを水面のように揺らしながら現実側へ手を伸ばそうとする。恐怖で動けない梓を救ったのは、美術部の先輩だった。先輩は梓を廊下へ引きずり出し、美術室の扉を閉めた直後、内側から激しい衝撃音が鳴り響く。先輩は蒼白な顔で告げる――四階の鏡室は“入れ替わりの鏡”と呼ばれ、映り込んだ人間を気に入ると、本物と差し替えようとする、と。 助かったことに安堵しながらも、梓の耳にはまだ“向こう側の梓”が扉を叩く音が微かに残っていた。帰り道、窓に映る自分の姿はいつも通り。しかし、ほんの一瞬だけ、意図しないはずの微笑が浮かんだ気がする。それが気のせいなのか、鏡の中の“あれ”の名残なのか――梓には確かめる勇気がない。 四階の鏡室で目にした“もう一人の自分”。 それはただの映り込みではなく、梓の居場所を奪おうとする“別の存在”だった。 放課後の学校に潜む“入れ替わりの恐怖”が、静かに梓の日常を侵食しはじめる――。

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エブリスタ
エブリスタ2025/12/03
  • 現在の作品放課後、四階の鏡室で