あらすじ
……クソをしているとき、人は何を考えるだろうか。『きんもちいい~』か、それとも『うわ、水が跳ねてケツについた!』だろうか。いや、きっと大半の人間は何も考えていないだろう。便座に腰を下ろし、ただ正面のドアをぼんやり眺めるだけ。ひょっとすると、クソをするという行為を恥じて、思考そのものを凍らせて現実から目をそらしているのかもしれない。
おれも今、現実逃避を試みている。窓もなく、狭苦しいこの空間で――。
おれは万年腹下しの平社員だ。あの夜も、仕事帰りの電車の中で腹の奥がドゥルルと腸を捻られたみたいに痛み出した。なんとか駅に着き、トイレに駆け込んで用を足したものの、道を歩いている途中でまた痛みがぶり返した。(当然だ。おれは下痢のとき平均三回は出す)
おれは慌てて駐車場の茂みへ駆け込んだ。野グソなんて一度もしたことなかったし、社会人としてのプライドもあった。だが、いつかこんな日が来ると思ってはいたので、迷いは一瞬で振り切れた。パンツを汚すより千倍マシだ。
ベルトを外し、しゃがもうとした――そのときだった。