あらすじ
結城凛は、どこにでもいる普通の高校生だ。
特別目立つわけでもなく、クラスの輪の中心にいることもない。そんな彼がいつも気にしてしまう相手——それが榊蒼真だった。
蒼真は学校中が認める完璧な男子。明るく、社交的で、スポーツも勉強もできる。誰からも好かれ、自然と周囲に人が集まる存在だ。
だからこそ、凛とは“関わりがないはず”の人物だった。
しかし、凛にはひとつ気になることがある。
いつも廊下で蒼真にすれ違うたび、必ず彼は笑顔で「おはよう」と声をかけてくるのだ。まるで仲の良い友人同士のように。
けれど教室では、蒼真は凛に一切関わらない。
あたかも“何もないふり”をしているかのように。
その温度差に、凛の胸はいつもざわつく。
気にしないようにしても、蒼真の笑顔が頭から離れない。
だが、凛は自分が彼に好かれる理由が分からず、蒼真の態度の真意も読み取れないままだった。
一方の蒼真もまた、複雑な気持ちを抱えていた。
本当は周囲の目なんて気にせず堂々と凛に近づきたい。
だが、凛が「目立つこと」を避けたがっているのを知っているため、無理に距離を縮めることができなかった。
だからこそ、短いすれ違いの瞬間だけでも凛と話せるのが嬉しくて、蒼真はその時間を大切にしていた。
そんな曖昧な関係が続いたある日、蒼真は放課後に凛を屋上へ呼び出す。
「凛、話したいことがあるんだ」
突然の誘いに戸惑いながらも、凛の足は自然と屋上へ向かっていた。
胸の奥がずっと疼き続けていた理由を、ようやく確かめたいと思ったのだ。
夕日に染まる屋上で向き合う二人。
蒼真の表情は、いつもの明るい笑顔とは違っていた。
そこには、長い間押し込めてきた想いと不安が滲んでいる。
「どうして俺に声かけるの?」と凛が聞くと、蒼真は迷いながらも言葉を絞り出す。
「……知らないふりされたくないから。凛のこと、ずっと気になってた」
すれ違い続けてきた二人の想いが、ようやく触れ合う瞬間。
曖昧だった関係は、ゆっくりと動き出す。
『君とすれ違う廊下で』は、完璧男子と地味男子、
すれ違いから始まる両片想いの学園BLストーリー。
—二人の距離がほどけるまでを、丁寧に描いていく物語。