あらすじ
世界を救う使命を負う勇者タクト。しかし彼が迎えた決戦当日の朝は、歴史に残るほどひどい寝坊だった。頭にはスプーンのように曲がった寝癖、歯も磨いておらず、寝起きのまま飛び出していく姿は、どう見ても“世界の命運を背負った勇者”ではない。
街を走り抜ける途中、村人たちは期待と緊張を込めて声をかけてくる。しかしタクトが返したのは、「今、歯みがいてないです……」という返事。緊張感はいっきに吹き飛び、村人は微妙な顔を浮かべるばかり。それでもタクトは魔王との最終決戦に間に合わせるために必死で駆け続ける。
ようやくたどり着いた魔王城では、魔王が堂々と腕組みをして待ち構えていた。世界を滅ぼす存在であり、恐怖の象徴であるはずの魔王。しかし勇者のまともでない姿を目にして、反応は思わぬ方向へ転がる。
「おい勇者。お前……寝起きで来たのか?」
呆れと怒りと失望が入り混じった声。タクトが素直に寝坊を認めると、魔王は深々とため息をつく。そして予想外の言葉を告げるのだった。
「今日はやめだ。帰れ。身だしなみ整えて来い!このまま倒したら我の名誉に傷がつくわ!」
戦わずして撤退を命じられる勇者。世界は救われなかったが、勇者の寝癖と生活習慣は改善された──という、緊張感ゼロの決戦劇。
世界がかかっているはずなのに、どこか抜けていて笑える、ゆるさ全開の冒険(?)コメディ。