あらすじ
結婚は“ゴール”じゃない。
――ふたりで歩く“現実”の物語が、ここから始まる。
凱斗と花凛の結婚生活。
一緒に眠り、一緒に笑い、甘い時間を積み重ねる毎日。
恋人の頃にはなかった安らぎと穏やかさが、確かにそこにあった。
けれど――未来の話になると、静かに意見が分かれ始める。
花凛はまだ「母」になるより「自分」でいたかった。
キャリアも夢も、途中で手放したくない。
対して凱斗は、いつか子どもを育て
家族として日常を積み重ねる未来を、ごく自然に思い描いていた。
それは押しつけでも義務でもなく、
『夫婦の先にある“当たり前”』だと信じてきた価値観だった。
さらに胡蝶家では、跡継ぎや子どもの話題は避けられない。
親族の期待を笑顔で交わしながら、
凱斗は“自分の願い”だけが胸の奥で重くなっていくのを感じていた。
どちらが正しいわけでもない。
けれど、答えはふたりにしか決められない。
そんな頃、凱斗は由衣と言う一人の女性と出会う。
『美食とワインの世界』で知られるエッセイスト。
柔らかい笑みのまま、迷いなく彼女は言った。
「結婚したら私、”すぐ子ども欲しい派”なんです。子どもって大好き」
たったそれだけの一言。
なのに、胸の奥が静かに揺れてしまった。
――「俺の欲しい未来は、由衣の未来の中にある」と――
一方、仕事で再会した”元同僚相楽恭平”。
かつて寄り添ってくれた彼に、花凛は思わず迷いをこぼしてしまう。
「キャリアを選ぶ女性なんて珍しくない。
子どもを持たない選択が否定される方が、もう時代錯誤だよ」
彼のその言葉は救いであり、そして――
凱斗との価値観の境界線を、静かに浮かび上がらせた。
――――そしてもうひとつの夫婦。
朔と華帆。
家のための結婚。
完璧に見える未来。
それでも朔は、胸の奥で花凛と華帆を比べてしまう。
選んだ未来と、選びたかった未来は違う。
その痛みだけを、誰にも知られないまま抱えていた。
二組の夫婦。
三つの価値観。
正解のない答え。
疑うのか、逃げるのか。
それでも向き合うのか。
夫婦は――選ぶ。
恋を終わらせるのか。
それとも、本当の愛へ変えていくのか。
甘く、ときに苦く。
それでも深まる愛の第三章。