あらすじ
「終わった……」
雨の東京駅。
地方工場の存続をかけた契約書を抱く営業マンの俺は、絶望していた。
飛行機は欠航。最後の頼みの綱である寝台特急《サンライズ出雲》のチケットは、手元のミスで**「女性用個室」**を取ってしまっていたからだ。
検札で弾かれれば、俺の社会人生命は終わる。
万事休すかと思われたその時、視界に入ったのは――鬼の形相で立ち尽くす一人の女性。
彼女の手には、間違えて取った**「男性用個室」**のチケットが握られていた。
目が合った瞬間、俺たちの脳内に「生存ルート」という名の花畑が広がる。
反射的に交わした熱い抱擁(ハグ)と、無言のチケット交換。
俺たちは互いの人生を守るため、一夜限りの**“共犯者”**になった。
これは、崖っぷちの社畜二人が、夜行列車で「おにぎり」を分け合い、弱さをさらけ出し、やがて名前も知らぬまま「かけがえのない相手」になっていく、大人の逃避行と再生の物語。
「……メシアじゃなくて、よかった」
「あなたが、“あなたのまま”で来てくれて、よかった」
タクアンの匂いと朝焼けに包まれて。
二人の恋が、東京駅から走り出す。