あらすじ
理不尽な上司、終わらない残業、言いたいことも言えない職場環境。
私は日々のストレスを心の奥底に押し込め、ただ愛想笑いを浮かべてやり過ごすだけの「大人」だった。心の中は処理しきれない感情のゴミで溢れかえりそうだった。
そんなある日の帰宅途中、スマートフォンで奇妙なサイトを見つける。
『言いたいことも言えない世の中へ。あなたの感情、弊社が代行して排出します』
――感情代行サービス。
半信半疑で、私は上司への煮え繰り返るような憎悪を書き込み、送信ボタンを押した。
翌日、職場に衝撃が走る。
あの陰湿で冷静だった上司が、突如として獣のように咆哮し、暴れ出したのだ。
それはまさに、私がサイトに書き込んだ通りの「怒り」の表現だった。
味を占めた私は、そのサービスにのめり込んでいく。
悲しくて泣きたい時は、サイトに『悲哀』を送信すれば、赤の他人が私の代わりに号泣してくれる。
友人の幸福への妬みも、将来への不安も、すべて誰かが肩代わりしてくれる。
私の心は凪のように静まり返り、かつてない平穏が訪れた。感情というノイズのない、完璧な生活。
しかし、利用開始から一ヶ月後。
画面に『無料体験終了』の通知が届く。
金銭の支払いを覚悟した私に提示されたのは、想像を絶する「決済方法」だった。
空っぽになった心に、何が流れ込んでくるのか。
現代人の抑圧された心を描く、戦慄のサイコホラー。