あらすじ
……いつからここにいるのか、今がいつなのか、自分が誰なのかすら何一つ分からなかった。
気がついた時には地下牢の中で鎖に繋がれていたように思う。
……曖昧な記憶の中で唯一自覚があるのは自分が『人間』ではないという事。
多分、沢山人を殺したということ。
何故殺したのかは覚えていない。
『自分』には何もない。
何もないから、何もかもがどうでもよかった。
死のうが生きようがどちらでもいい。
ここに居続けることが『罰』なら、それで構わない。
そう、思っていたのに。
……あの眩しい『瑠璃色』に出逢ってから、クソッタレで代わり映えのしない世界は俺の意思なんか完全に無視して逆しまに廻り始め、運命も、未来さえも予想だにしない方向へ転がり出した─────。
……人でなきもの、白厭童子(はくえんどうじ)と呼ばれ、化け物と蔑まれるその男は、鎖に繋がれた牢の中で看守から日々苛烈な拷問や虐待を受けながら空虚で無為な時を過ごしていた。
自分の名前も、鎖に繋がれる理由すら分からない彼にある日突然齎されたのはたった一つの夜明けを呼ぶ光。
対魔師の名家、獅童家の子息であり、自身も対魔師である義琉(たける)と白い青年の邂逅は世界の命運をも巻き込み、止まっていた時が動き出す発端となる。
『……ニンゲンは大嫌いだが、お前と居るのは悪くねぇと思った。……それだけだ』
『お前と俺は同じだよ。心も身体も傷ついたら痛いし、心配する人だっている。同じように飯を食って、笑って泣いたり、怒って喧嘩したり。俺たちと何も違わない。温かい心を持った人間だよ』
お互いの差異性、妖しのものと人間の同一性。
互いの境遇、抱えたものに苦悩し、時に支え合い反発し合いながら、共に生きる方法を探り二人は前に進んでいく。
"今度こそ必ず、その手を掴むからどうか夜の先で待っていて───"
巡る世界の果てに本当の自分を探しに行く架空BL異世界ファンタジー。
───ねぇ、知っている?『希望』の色ってとても綺麗な色をしているんだって。
……それぞれの望み、そして願い……みんな硝子細工みたいに脆いから、跡形もなく砕ける瞬間が一番綺麗なんだ───。
『君』の"希望"はどんな色をしているのかな?
……今度こそ、その手で零さずに掬えるといいね。
『君』が幸せな結末を迎えられる事を心から願っているよ─────。