あらすじ

暗く淀んだ坑道国家。 火床の赤だけが生命の証のように揺れる地下で、ひとりのドワーフ鍛冶師は、今日も黙々と鉄を打っていた。 だが、彼の心にはもう長いあいだ煤のような倦怠が沈んでいる。 技が錆びたわけではない。 誇りを捨てたわけでもない。 ただ――「この鉄は、いったい何を救うのか?」 答えの見えない問いが胸に重く眠り続けていた。 そんなある日。 坑道の奥で聞こえるはずのない“赤子の泣き声”が響く。 暗闇に置き去りにされていたのは、 この国に存在しないはずの――人間の赤子。 ドワーフの髭を掴んで笑うその幼子は、 どこから来たのか、なぜここにいるのか、誰にも説明できない。 ただ、その出会いを境に、鉱山国家の運命は静かに狂い始める。 森に生きるエルフたちは、長年対立していたドワーフの変化に気づき、 “死の大地”と呼ばれた不毛の荒野では、かすかな息吹が芽吹き始め、 外界の大国――帝国は、三つの種族が結びつきつつある気配に危機を覚え、軍靴の音を響かせる。 それはまだ闇の底の小さな火種にすぎなかった。 だが、のちに“黎明国”と呼ばれる新たな大地の誕生も、 帝国と三種族を巻き込む大戦の始まりも、 すべてはこの赤子の泣き声から始まったと言われる。 荒廃の大地は光を取り戻すのか。 三種族は手を取り合うのか、それとも滅び合うのか。 鍛冶師は鉄を打つ意味を見つけるのか。 そして―― 坑道で拾われた小さな命は、世界に何をもたらすのか。 夜明け前の混沌が、静かに動き出す。 これは、闇を割って国が生まれる“黎明”の戦記である。

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小説を読もう2025/12/02
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