あらすじ
その日、僕はたしかに死んだはずだった。
二年前――彼女が村を去ったあの日のように、また魔獣に襲われて……
……あの時と違うのは、助けるべき人を逃せた事で。
だから、僕は威嚇して唸る魔獣を前にしても、あの時のように泣きわめく事なく、胸を張って覚悟を決める事ができた。
自警団員として、刺し違えてでも魔獣は里へは行かせない――と。
ただ……確実に迫った死を目前に、一瞬だけ思ったのは――
『――死ぬ前に、もう一度彼女に会いたかったな……』
もはや決して叶う事のない願いを押し殺し、魔獣目がけて僕は特攻を仕掛けた。
――その時だった。
不意に視界が真っ白に染まり、衝撃が僕を吹き飛ばした。
痛みすら感じる間もなく――薄れゆく意識の中、僕の目が最後に捉えたのは、空を覆って降り注いでくる土壁と、ぐしゃぐしゃの肉塊になった僕の身体だった。
突然の出来事にワケもわからないままに、僕は消えていく思考に身を任せるしかなかった。
――そうして死を迎えたはずの僕が次に目覚めた時、眼の前に彼女達がいたんだ。
「――あたしはリミアナ。
人類会議同盟軍所属の対人類文明圏敵対種殲滅騎です」
そう告げた彼女は、空の彼方よりさらに上――星々の海を超え、敵を追ってこの世界にやって来たのだという。
「――現在、あなたにはふたつの選択肢があります」
そうして告げられたのは、このまま死ぬか、リミアナの目的を叶える為に彼女の主となるかの二択だった。
実際のところ実質選びようのない選択に、僕は彼女の主となる方を選ぶしかなかった。
――かくして。
僕はリミアナの――銀河文明の主力超兵器である彼女の、未発達惑星上における現地指揮官として野戦任官されることになり、この星で勇者と呼ばれる存在を超える力を手に入れる事になってしまった……
リミアナの目的は太古の昔、この星に降り立ったとされる邪神の殲滅。
まさに勇者にふさわしい偉業だろう。
その為に、僕はリミアナと共に旅立つ。
まずは邪神の行方を知る、魔王に会う為に……
二年前、勇者と共に旅立って行ったあの娘に、また会えるかもしれないという、ほのかな希望を抱きながら……
――これは偶然、勇者の力を手に入れてしまった俺が、世界を救う物語。
――そして、本当の勇者となった僕が、もう一度、彼女に振り向いてもらう為の物語である。