あらすじ
「えっ、魔王倒してしまったんですか!!!???」
女神は驚嘆の声を上げた。思ってたんと違うリアクションに俺の方もパニックになる。
「あ、あれ? そういう話じゃなかったっけ?」
情報を整理する。数か月前、女神に招かれてここに来た。地肌が透けるほど薄い羽衣をどこから吹いているのかわからない風にたなびかせながら現れた彼女を見て、疑う余地もなく女神だと思った。
「あなたは世界番号8120034――『メラン』の民に招かれました。民の意思に応えるべくわたくしが『チキュウ』から呼び寄せたのです。あなたには大いなる使命が与えられるでしょう。この指輪とスキルはわたくしからの贈り物です。幸運を祈ります」
言葉通り俺はメランへ転送され、王から魔王討伐を依頼された。喜び勇んで飛び出して、仲間を集めて戦った。道中つらいこともあった。スキルが戦闘向きでないことから無能と呼ばれ、仲間にも裏切られた。でも最後は魔王を倒して大団円。うんうん。これが異世界転移ってやつだよな。目的は達成したし一旦カナに報告でも入れておこうと思って戻ってきたら——
「うちの世界はスローライフが売りなのです。それなのに魔王を倒してしまって、この世界は良かっただの悪かっただの異世界評論家みたいなことを発信されても困るのですよ! こっちからしたらね、そんな人に提供する異世界なんてないのですよ!」
女神は絶叫して目の前で指を立てる。怒りの形相であるが中指ではない。
「命じます。メランに戻って魔王を蘇生してきなさい」
こうして魔王討伐後の俺だけの物語が幕を開けるのだった。