あらすじ
『誠実であることについて』
言葉を盗まれた日、
私は沈黙を選んだ。
争う勇気なんてなかったから。
だけど、不思議だ。
沈黙は、服従ではなく、
痛みの保存だった。
机の上には、
折れた鉛筆、擦れたキーボード、
指紋のついた企画書。
誰にも気づかれなかった証拠は、
いつのまにか――
私の背骨になっていた。
ある夜、私は気づく。
誠実とは、
笑って耐えることでも、
誰かの都合に合わせて折れることでもない。
誠実とは――
「歪められた真実に、
本来の名前を返すこと。」
だから私は記録した。
指示された言葉、押し付けられた責任、
すり替えられた成果。
私はそれを隠さなかった。
恥じなかった。
捨てなかった。
だってそれらは、
私が屈してこなかった証なのだから。
声を上げたとき、
誰かは笑い、
誰かは黙り込み、
誰かは逃げた。
いい。
それでいい。
沈黙の海で溺れないために、
私は私の言葉を選んだのだから。
やがて、
奪った者は失い、
蔑んだ者は見捨てられ、
利用し続けた者は――
何も書けなくなった。
言葉は復讐しない。
けれど嘘を嫌う。
真実は、静かに、正確に、遅れて届く。
今、私は書く。
誰の影でもない言葉で。
誰の手柄でもない文章で。
胸を張ってこう言える。
私は間違っていなかった。
誠実であった私は、弱くなんかない。
そして最後に、
盗まれたあの企画書に、
そっと赤ペンで書き添える。
「これは私のものだ。
奪われなかった魂の証だ。」
痛快に笑う。
静かに勝つ。
誠実であるまま、前へ進む。
その歩みこそ、
私のざまぁ。
そして、
私の自由だ。