あらすじ
アウトドアショップの店員にして、趣味で山を登る23歳の女性・式守霙。体力こそあるが、本格的なアルパインクライミングとは無縁だった彼女は、北岳での新商品テストをきっかけに“山の本当の姿”を知る。帰りの宿で偶然目にした特集番組には、かつて世界の未踏峰を次々と切り開きながら、アイガー北壁の冬季単独登攀で左足を失った伝説のクライマー・雅智則の名があった。
彼の語る山への情熱は、霙の胸に深い衝撃を残す。再び山を渇望しながらも義足となった身体で前へ進めずにいる雅、そして“何かを求める心”にまだ名前をつけられない霙。二人の出会いは、やがて避けられない運命の登攀へと繋がっていく。
舞台は日本の山々から、ヒマラヤの氷壁へ。そして登山史上もっとも危険と称されるK2南西壁へ――。人智を寄せつけず、数々の登山家を呑み込んできた凶絶の壁に挑むのは、自然という圧倒的存在と、人間というあまりにも小さな存在の対峙そのものだった。
生きる理由を、足を失った男は取り戻せるのか。未熟ながらも山に魅せられた彼女は、どこまで高みに行けるのか。
“そこに山がある”という言葉の先にある、二つの魂の物語が始まる。