あらすじ
この世界では魔法がすべてを支配している。すべての生き物には魔素が備わっており、個体差はあれど全員が生まれた時からそれを使うことができる。
この世界には「魔力欠乏」という体質が存在し、この状態で生まれてくると魔素がほぼゼロの状態で生まれてくる。普通は努力よって個人の魔素量をある程度増やせるが、この体質で生まれてくると鍛錬しても魔素が増えることはない。そのため、魔導帝国では魔力欠乏症の人間に人権は無く、死ぬまでこき使われる奴隷として扱われる。
奴隷の戦士エランは、カルケラタン島の地下闘技場で貴族の娯楽のために戦う日々を過ごす。朝の鍛錬として、師匠に教えてもらった豪魔流空手の基本型「反魔心境」を練習している。師匠曰く、これを体得すればあらゆる魔法を跳ね返すことができるようになるらしい。魔力が無く、魔法を使えない俺にはこれを体得しない限りこの闘技場で勝ち残ることなど到底できない。しかし、現実には87戦87勝の無敗のまま、エランはここまで生き残ることができた。これを可能にしているのは「魔力無効化」体質にある。エランに魔法が当たると魔法が目の前で突然消える。学の無いエランには原理はわからないが、この体質によって魔法を無力化し、物理攻撃のみで勝ち残ってきた。エランの武器はこの鍛えぬいた肉体しかなく、地下闘技場ではいかにして対戦相手を撲殺するかしか考えていない。
隣で眠る奴隷少女セシリーが起きてきて、一緒に型を繰り返す。エランは体に刻まれた奴隷烙印の痛みに耐えながら、静かな自由を感じる。この時間が、エランが冷静に物事を捉えて考える癖を身に着けさせた。後の反乱の始まりを予感させる。