あらすじ
これは初の女性棋士誕生が誕生し、名人を獲得するまでの物語。
将棋界には、誰もが認める絶対的な天才がいる。
相川悠真八冠。
小学五年で数学オリンピック優秀成績。
史上最年少記録となる小学六年でプロ棋士入り。
日本最高学府・東京至誠大学医学部に首席で入学し、在学中に弁護士資格と公認会計士資格を取得。
同時期にITスタートアップ・株式会社カイロスを設立し、
AI・金融・医療データを扱う革新的なプラットフォームを次々と立ち上げ、学生起業家としても時代の寵児となった。
将棋の公式戦勝率は九割超。
八大タイトルを完全制覇。
容姿端麗、運動も音楽も一流――
彼はまさに、時代が生んだ“完成形”だった。
だが、私は知っている。
彼と肩を並べる――いや、その記録すら塗り替えるはずだった天才を。
私の弟、沢村恒一。
小学三年生でプロデビューという前例のない記録を打ち立て、出場した公式戦はすべて全勝。
角交換四間飛車を得意とし、「角交換振り飛車の神様」とまで称された存在だった。
史上最速でタイトル挑戦を決めるも、相川悠真との公式タイトル戦が実現する前に、この世を去った。
恒一は生まれつき病弱で、医師からは長く生きられないと告げられていた。
両親は彼を最優先し、私はいつも後回しだった。
――そして恒一の死後、両親は一家心中を図り、
生き残ったのは、私だけだった。
施設に引き取られた私のもとへ、ある日一人の男が現れる。
彼は感情を交えず、淡々と言った。
「最低限の生活は保障する。
その代わり――君には、名人を目指してもらう。」
こうして私は将棋の世界へ足を踏み入れた。
天才の弟を失い、家族も居場所も失った少女として。