あらすじ

天文二十一年(一五五二年)――。 越後の虎、長尾景虎の初上洛に随行した若者がいた。その名は景乃。景虎の双子の妹にして、上杉家の当主。男装の麗人は、都で運命の出会いを果たす。 相手は室町幕府第十三代将軍、足利義輝。都の混乱に翻弄されながらも、理想の政を志す若き将軍。その凛とした佇まいに、景乃は初めて女としての想いを覚える。 だが、時代は戦国。義輝は三好長慶との抗争に敗れ、京を追われて朽木谷へ逃れる。景乃もまた将軍に従い、山深い谷に身を寄せた。そこで二人が交わすのは、政の理想、義の在り方、そして互いへの密やかな想い。 義輝の正室は、関白の娘・光子。牡丹のような華やかさで御所を彩る美姫。一方、やがて義輝の寵愛を受けることになる小侍従局は、藤のような憂いを秘めた女性。そして景乃は――菖蒲の花のように、凛として強く、鋭く。 三人の女性、三様の美。それぞれが義輝の傍らで、異なる役割を担っていく。 景乃の傍らには、幼い頃から仕える色部長秋がいた。主を想う心を胸に秘めながら、ただ黙して支え続ける男。朽木谷の御座所へ向かう景乃の心を知りながらも、道ならぬ恋に身を焦がし続ける。 やがて義輝は六角氏の助力を得て帰京を果たす。幕政の復興に奔走する将軍。その姿を見守りながら、景乃は悟る。自分と義輝の間には、越えられぬ壁があることを。将軍には正室がおり、心を預ける側室もいる。そして何より、景乃には果たすべき使命があった。 兄・景虎と共に関東を制し、大軍を率いて上洛する――。それこそが、長尾の家に生まれた景乃の宿命。 川中島では宿敵・武田信玄が待ち受ける。戦乱の世に生きる者として、景乃は再び越後へと向かう決意を固める。 都への憧れ。将軍への想い。そして武人としての誇り。 男装の麗人が駆け抜ける、乱世の京都と越後。華麗なる宮廷と血で血を洗う戦場。理想と現実の狭間で揺れ動く、若き魂の物語が、今ここに幕を開ける。

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エブリスタ
エブリスタ2025/11/29
  • 現在の作品景乃、風となりて