あらすじ
恋人の死をきっかけに、陸久の時間は止まった。
発作のように蘇る最期のイメージ、押し潰されるような息苦しさ。
カウンセリングも薬も効かないまま、二年以上が過ぎていた。
そんな陸久に提示されたのは、特定の記憶を不可逆的に消去する治療。
彼女と過ごした日々も、別れの言葉も、死のイメージさえも――
すべて、脳から切り離してしまうという選択。
忘れたら、彼女は本当に自分の中から消えてしまう。
けれど、忘れなければ、このまま自分が壊れてしまう。
その板挟みの中で悩み抜いた末に、陸久は治療台に横たわる。
鎮静剤が身体に広がり、記憶の海が白い闇へと沈んでいくとき、
彼は「君を消した自分」として、もう一度生き直すことになる。
記憶から“君”の存在を消し去ることを代償に、それでも生きようとする一人の少年の、静かな再起の物語。