あらすじ
湖と霧に抱かれた小さな村で、
少女ナカヨと弟ユナは「言葉の前の世界」を生きていた。
触れれば、水の揺れや風の呼吸が胸にそのまま届く。
言葉はまだなく、感情は息と体温で伝わる。
ある朝、白い鹿が霧を割って現れる。
それは森羅の記憶と祖霊の根に通じる “呼びかけ” だった。
二人は気づく。
自分たちは、ただ 生まれた のではない。
選ばれた のだと。
湖の息と、山の根と、火の温度。
言葉が生まれる前の日本で、
世界はまだやわらかく、変わりうる形をしていた。
これは、世界と人がまだ別れていなかった時代の物語。