あらすじ
瀬戸内海沿岸部を中心に各地を襲ったダウンバースト災害により、兄を失った主人公長月綾乃。
そして同じ災害で双子の兄弟である浦田漣に救われて生き残った浦田透。
透は、建築家として飛び抜けた才能のあった弟が死に、何の特技もない凡人の自分が生き残ってしまった事。また兄なのに弟に救われたという事実が受け入れられず自身を「漣」だと思い込むように。
両親により、古くから家族同士で親交のあった潮隆に引き取られ、彼が館長を務める潮見族館で療養を行うも、一向に治る気配はない。
そんな中、潮見水族館で生まれたトビウオの変異種「シオギン」を通して知り合う綾乃と透。
似た境遇の中で意気投合する2人。会話の中で、綾乃は「昔漣に会って会話した」記憶を思い出す。
しかし、漣と思い込んでいる透にはその記憶はなく、次第に自分がただ弟だと思い込んでいる事に気がつく彼。
そんな時、シオギンが寿命を迎えこの世を去る。
その存在を嫌いながらも、どこか心の支えにしていた透は酷く動揺。
一方で綾乃は、過去の出来事にキリをつけるべく親友の三橋玲と共に、シオギンの慰霊祭を企画する。
透も混えながら進んでいく祭りの準備。その当日。夜のメインイベントを前にして、シオギンの遺体と共に透は姿を消す。
探しに行く綾乃。彼は、海岸沿いの堤防で死んだシオギンと共に身投げを図っていた。
嘘を吐き、あまつさえ弟の皮を被らないと生きてすらいけない自分の弱さに絶望する透。
しかし綾乃は、そんな彼に「生きて欲しい」と懇願する。
それは、自分を助けた兄がきっと最期に抱いていた美しい願い。生きるという汚く苦難に満ちた行為をする中で、その願いは余りに眩しく、そして重荷ではあったが、だからこそこの人生を生きれるのではないかと諭す。
「生きて欲しい」という死者達のエゴ。それに感謝しながら、2人はシオギンの遺体を海へ還すのだった。