あらすじ
裏社会を統べる男、イザナ・オルグレイ。
その傍らに仕える専属秘書――ノア・ヴェルン。
記憶を失った彼は、イザナに拾われて以来、
冷たくも穏やかな檻の中で生きてきた。
夢の中で響く鐘の音。
光に包まれた古い教会。そして、少年の笑顔。
その断片が現実に滲み始めたとき、
ノアの心に封じられていた“過去”が静かに目を覚ます。
イザナは恐れていた。
ノアが真実を思い出すことを――
そして再び、手のひらから零れ落ちていくことを。
かつて神を喰らい、世界を支配した男と、
記憶を失い、なお光を宿す存在。
支配と救済、愛と罪が曖昧に溶け合うその終着点で、
二人は再び、約束の続きを選び取る。
――「君が望むなら、またすべてを壊そう。」
崩壊の果てに残るのは、罰か、それとも永遠の祈りか。
登場人物紹介
◆ イザナ・オルグレイ(男)
裏社会の拠点〈ECLIPSE〉を掌握する支配者。
静謐な声と確信に満ちた言葉で、人も都市も支配下に置く。
冷徹な判断と非情な手腕の裏には、過去への執着と、誰にも触れさせぬ喪失の影が息づいている。
ノアに対しては、常軌を逸したほどの執着を見せ、その行動は「保護」と「支配」の境界を曖昧に溶かしていく。
彼の沈黙に隠された真意、そして“失われた記憶”にまつわる言葉の意味は、物語の核心へと繋がっていく。
◆ ノア・ヴェルン(中性)
国家情報機関から〈ECLIPSE〉へ送り込まれたスパイ。
冷静沈着で、任務のためなら感情すら切り捨てることを厭わない。
だが、イザナと出会ったその瞬間から、歯車は静かに狂い始めた。
正体を知られながらも彼に“専属秘書”として迎え入れられ、ノアは次第にその支配の中へと取り込まれていく。
イザナの矛盾した言葉と、そこに滲む温もりに惑わされながら、封じられていた“記憶の断片”が再び疼き始める。