あらすじ
「お前の音には魂がない」
――そう言って俺を追放した宮廷楽団の連中はまだ知らない。この世界に鳴り響く全ての魔法、全ての伝説が、俺の“絶対音感”の前ではただの不協和音に過ぎないということを。
宮廷調律師だったキースは、音楽への異常なこだわりから追放され、日陰者となった。
だが彼には、世界で唯一無二の才能があった。それは、万物に宿る“魔力(マナ)の周波数”を寸分の狂いなく聞き分ける【絶対音感】。
錆びついて捨てられた剣は、英雄が振るった伝説の魔剣へ。
制御不能で暴走するゴーレムは、王国を守る忠実なる守護者へ。
呪われていると誰もが恐れるアーティファクトは、国を救う奇跡の聖遺物へ。
原因不明の“劣化”や“暴走”は、全て魔力の“調律”が狂っただけのこと。
ガラクタと伝説の違いは、そこに“調律師”がいるかいないか、ただそれだけだ。
これは、たった一人の男が、その指先でガラクタの価値を支配し、やがては市場を、国家を、そして世界のパワーバランスそのものを“調律”していく物語である。