あらすじ
祖母の家の朝は、いつも同じ匂いがする。
甘い卵焼きと、醤油の焦げた香り。
両親の離婚調停中で、行き場を失った私——リンは、この家に身を寄せていた。
「おはよう、タマエ」
祖母が、私を違う名前で呼ぶ。
「おばあちゃん、私、リンだよ」
「あら、そうだったわね」
祖母はすぐに訂正するが、その目はどこか遠くを見ている。
テーブルには、いつもの朝食。そして——小さな白い饅頭。
「さあ、食べなさい。よく食べる子は、いい子よ」
白い饅頭は、不思議な味がする。少し鉄のような、でも甘い。
翌朝。祖母は私を「ユウジ」と呼んだ。
翌々朝。今度は「サトコ」。
全て、数十年前に死んだ子どもたちの名前。
ある夜、私は祖母の日記を見つけた。