あらすじ
東京の高校生・海原慎(はいばら・しん)は、沖縄の祖父母の墓参りの最中、「オキナハ・チュウカクの門」と刻まれた石碑に触れ、海中異世界都市《オキナハ・チュウカク》へと転移してしまう。
そこは人魚族《マーレ》と多種族が暮らす、サンゴとガラスと量子ネットワークが織りなす科学都市。慎を拾ったのは、天才マーレ考古学者にして、ちょっと悪ノリの激しい美女博士・シエラ=ラグーン。
祖先同士の「困ったときは子孫を貸し出す」という古い契約により、慎は彼女の“弟子”として、都市トラブル解決に巻き込まれていく。
恋愛スパムをばらまく古代AI暴走事件、開発と保護の狭間で揺れる《月光サンゴ遺跡》問題、そして深海から響く「祖先の歌」。慎は地上の知識とまっすぐな感性で、オキナハの人々と共に選択を迫られる。世界を分断したまま門を閉ざすのか、それとも往来可能な新たなゲートを築くのか。
「帰りたい」と願う少年と、「繋ぎたい」と願う人魚博士。
師弟であり、まだ名前のつかない絆で結ばれた二人は、やがて海と空を循環する“周期ゲート”という答えにたどり着く。
十五歳の短い夏が、二つの世界の未来をそっと動かしていく——。
登場人物紹介
海原 慎(はいばら・しん)
本作の主人公。東京在住の十五歳。素直で臆病そうに見えるが、筋の通らないことにはきちんと異議を唱えるタイプ。ITと社会科が得意で、情報リテラシーや環境問題の基礎知識をオキナハでフル活用することに。祖父母の「海の血筋」を受け継ぐ“共鳴鍵”として、深淵ゲートにリンクする特別な存在だが、自分ではあくまで「ただの高校生」だと思っている。シエラからは“弟子くん”“かわいい”と弄られつつも、その誠実さと発想力で周囲から徐々に一人のパートナー候補として認識されていく。
シエラ=ラグーン
オキナハ・チュウカク中央研究庁・古海文明考古班主任。マーレ族の女性。長い青緑の髪と琥珀色の瞳、白衣+海色ボディスーツ+(時々)だて眼鏡というスタイルがトレードマーク。明るく飄々とした言動の裏で、都市とゲートの行く末を背負う責任感が強い。慎を「実験体一号」「弟子」とからかいながらも、その知性と優しさを誰より評価している。本気を出すとチート級だが、人の心にはかなり不器用。
イルマ
シエラ研究室所属の若手マーレ研究員。小柄で人懐っこく、お祭り好き。慎を「かわいい地上人」と全力で愛でる担当。潮流ネット周りの実務が得意で、ツッコミ役に回ることも。
レン
水質工学担当のマーレ青年。クール系だが実は熱血。環境データ分析のプロとして、月光サンゴ遺跡問題で慎とシエラを技術面から支える。
ノノ
寡黙な記録係マーレ。常に端末片手に全ログを記録している。慎の発言や発想を淡々と保存しつつ、要所で「重要」とタグ付けしている隠れファン。
ジン=リーフ
マーレの実業家。月光サンゴ遺跡リゾート計画の推進者として登場するが、慎との対話を通じて「守りながら稼ぐ」方向へ舵を切る現実主義者。以後、周期ゲート構想の重要なスポンサー候補となる。
海原家・祖先たち
本編では幻視・記録映像として登場。マーレとの古い友好条約を結び、「困ったときの子孫貸し出し契約」を残した張本人たち。軽口に見えて、実は二つの世界を再び繋ぐための布石でもある。