あらすじ

――アレン・ヴァイスの日記より 誰に宛てて書くわけでもない。 誰かに読んでほしいわけでもない。 ただ、この世界で――僕が確かに生きたということを、どこかに残しておきたかった。 僕の生きる世界《ルーネス》は、 光と創造の神ルーメリアと、闇と破壊の神アバドス―― 二柱の神によって創られたと伝えられている。 ルーメリアはまず四つの生命を生み出した。 天を司る竜《ドラグネウス》。 地を支配する狼《フェンレイド》。 海を統べる蛸《クトゥリア》。 そして森を守護する樹《ユグナール》。 彼らが天・地・海・森を築き、 そこから無数の命が生まれた。 しかし、拡張を続ける世界にアバドスの“調整”は追いつかず、 ルーメリアは彼に六つの悪魔を託した。 強欲のアザル。 嫉妬のリスティア。 怠惰のマルゴス。 色欲のカリオン。 憤怒のヴェルクス。 暴食のネモラ。 アバドスは彼らと共に、ルーネスとは異なる次元―― 《ネザーレルム》を築いた。 この二つの次元が呼応することで、 創造と滅びの均衡は保たれるようになったという。 やがてルーメリアは、悪魔たちとの戦いのさなかで、 人間の勇者レオンと出会い、愛し合った。 二人の間に生まれたのは、 生の神《モルティス》。 呪の神《ネフェル》。 正義の神《ユリア》。 一方、アバドスもまた、ネザーレルムを訪れた無限の魔女《エルダ》と結ばれ、 闇の神《ナハト》。 力の神《ヴァルド》。 支配の神《オーリス》。 をもうけた。 そして、レオンの死後。 深い悲しみに沈んだルーメリアの傍らに、 唯一の理解者であったアバドスが寄り添った。 その果てに、 光と愛の神《ソルヴェリア》。 疫病と破壊の神《ペストリア》。 炎と戦争の神《イグナート》。 三柱の神が誕生した。 こうして世界には九柱の神が並び立ち、 それぞれが力を蓄え、国を築いた。 だが、モルティスが堕ちた。 死と傲慢の悪魔となった彼の存在が、 再び世界の均衡を狂わせ、 ルーネスは混沌の時代へと沈んでいった。 その後、ルーメリアとアバドスは姿を消す。 二柱を失った世界では、残された神々が互いの領域と理を奪い合い、 戦火が天を覆った。 その戦争こそが――神々の黄昏。 終わりなき神の戦は、やがて全ての神国を焼き尽くし、 すべての神々が姿を消した。 こうして神話の時代は幕を閉じ、 世界は“人の時代”を迎えることとなった。 現在のルーネスは三つの大陸と一つの海底領域に分かれている。 北大陸には《エルダリア魔法学院》。 中央大陸には三つの国――《レオン帝国》、《ソルヴェリア聖国》、《ユグナリア連邦》。 南大陸には《フェンラーディア獣王国》。 そして海の底には、伝説の《クトゥリア帝国》。 これが、今の“六国時代”と呼ばれる世界の姿だ。 僕はそのうちの一つ、中央大陸の《レオン帝国》に属し、 王都へ続く四つの門のひとつ、南門に勤務している。 ここは、辺境から流れてくる商人や旅人、傭兵たちが行き交う境界の地。 そして、世界の息づかいを最も近くに感じる場所でもある。 この日記を読むにあたっては、これが前提となる知識だろう。 書き忘れたことがあれば、また追って記していくつもりだ。 ――アレン・ヴァイス レオン帝国南門駐在 帝国暦947年

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カクヨム2025/11/09
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