あらすじ

古文書の匂いに囲まれた史料室で、僕は南北朝時代の従軍記録を解読していた。 「巫女、名ヲ『アヤ』ト云フ」 アヤ。三ヶ月前に別れた、元カノの名前だった。 偶然だと思った。よくある名前だ。でも、記述は続いていた。「顔ハ細ク、目尻ニ小サキ黒子アリ」「笑ウ時、少シ左ノ口角ガ上ガル」「『ていうか』ト云ウ言葉ヲ多用ス」――すべて、彼女の特徴と一致していた。 僕は他の史料を調べ始めた。鎌倉時代、室町時代、江戸時代、明治時代。すべての時代に、「アヤ」という名の女性がいた。そして、すべての記録で、彼女は誰かを探している。「汝、我ヲ覚エルカ」と。 さらに恐ろしいことに気づいた。「アヤ」が問いかける相手――その記述が、すべて僕に似ていた。「学問ヲ好ミ、記録ヲ離サズ」「古キ記録ヲ渉猟ス」。僕と同じ、歴史学者の姿だった。 僕は自分の名前でも史料を検索した。そして見つけてしまった。

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カクヨム
カクヨム2025/11/09
  • 現在の作品元カノは南北朝にいた