あらすじ
毎朝六時、町の一本の通りを“死者の葬列”が通る。少年・凪人は、学校へ行く代わりにその列に混じって歩くのが日課になっていた。列の最後尾には、いつも灰色のコートの青年がいる。背丈も歩幅も、髪の跳ね方も、自分に似すぎているから——凪人はそっと「未来の自分」と呼んだ。
ある朝、目が合った瞬間、町の時計が止まり、鳩は空で固まる。世界が後ろ向きに噛み直されるなか、凪人は気づく。自分の声は“昨日の言葉”でしか喋れない。友人・遼は笑いながらも、列の順番に抗おうと鐘を鳴らす。動きだしたのは時間か、それとも別れの手順か。
写真の雨、影の規則、飛べない鳥、鳴らない鐘。順番を変えるたびに、だれかの昨日が壊れていく。凪人は選ぶ。「追いつかない」ために。けれど未来の自分は静かに告げる——やり直しは、やり直せなかった場所に別の傷をつけるだけだと。
それでも呼ぶ。遼の名を、母の名を、自分の名を。葬列の外で泣きながら、前へ。