あらすじ
特別支援学校の理科教師・本宮香(もとみや かおる)は、高等部一年の生徒・鼓真由美(つづみ まゆみ)の授業を担当している。真由美は生まれつきの全盲で、光の存在を知らない。感情表現が控えめな彼女に、香はできる限り自然や季節を感じさせようと丁寧に授業をしていた。
ある日、授業の終わりに真由美がふと尋ねる。
「本宮先生、失恋ってどんな音かな?」
突拍子もないその問いに、香は言葉を失う。視覚を持たない真由美にとって、世界は“音”によって形づくられている。恋や失恋さえも、彼女にとっては「音」で感じるものなのかもしれない。真由美の言葉の意味を探ろうと、香は彼女の世界に少しずつ踏み込んでいく。