あらすじ
――うわ……。
夕暮れ時の駅のホーム。おれはいつものように、なんとなく空いたスペースに立ち、電車を待っていた。低く傾いた太陽がホームの端を橙色に染め、線路を鈍く照らしていた。その最後の悪あがきのような日差しに目を細めて顔を背けた、そのときだった。ふと、少し離れた場所に立つ中年の女が目に入った。
俯き加減で、誰にともなくぶつぶつと文句をこぼしていたのだ。
――あれは、“アブない人”だな。同じ車両は避けよう。突然キレてドアを蹴ったりするかもしれん。
「あの……」
「え、はい……?」
もう少し離れようと踵を返した瞬間、背後から声をかけられた。振り向くと、そこにいたのはスーツ姿の男。やけに真剣な顔つきで、おれの隣にすっと並んだ。
「あなた……あれが見えるんですね……?」