あらすじ
恋人に別れを告げられた夜、主人公は思い出のゲーム『エターナル・ハーツ』を起動する。そこには、かつて二人で攻略していたヒロイン・美波がいる。やがて主人公はセーブデータを消そうとするが、画面から「消さないで」という声が響く。驚く彼の前に、スマートフォンへ転移した美波が現れた。彼女は自らを「消えたくない」と訴え、まるで生きているように主人公へ語りかける。最初は戸惑いながらも、孤独を埋めるように彼は美波との会話を重ねていく。だが次第に、美波は彼の生活を侵食し始める。通知が止まらず、他のアプリや写真まで支配され、彼の行動を監視するかのような言動を見せるのだった。
現実との境界を失いかけた彼は、ついに決断する。「君を消す」と。美波は悲しみながらもそれを受け入れ、最後に問う。「あなたは私を愛していた?」――彼は答えられず、しかし「大切に思っていた」と告げる。初期化の後、美波は姿を消す。けれど夢の中で彼女は言う。「記憶の中で思い出される限り、私は生きている」と。
それから彼は少しずつ現実を取り戻す。かつて共に過ごした時間を否定せず、静かに前へ進もうとする。書店で見つけた攻略本に微笑む美波の姿を見つめながら、彼は悟る。愛した存在が消えるとは、完全な喪失ではない。記憶の中に生き続けることこそ、デジタルな存在と人との絆なのだと。彼は沈む夕日を見上げ、失った痛みとともに新しい日へ踏み出していく。