あらすじ
レインは、地味ながらも安定した冒険者生活を続けていた。
同世代の仲間たちは次々と昇格し、若手の新鋭たちは名を上げていく。
一方、自分は低ランクのまま。
夢見た“英雄”とはほど遠い現実が、徐々に彼の心を蝕んでいた。
(俺は、なんで英雄になりたかったんだっけ……?)
惰性のように依頼をこなしながら、レインは自問を続ける。
称賛を浴びたいから? 名を残したいから?
――そのどれもが、心の奥で違うと響いた。
そんなとき、ひとりの少女に出会う。
新人冒険者のアイナ。
彼女は、生まれながらに突出した祝福のスキルを持ち、誰よりもまっすぐに夢を語った。
「いつか、みんなを幸せにする英雄になるんです!」
その言葉に、レインはかつての自分を重ねる。
けれど同時に、心の奥で微かな痛みを覚えた。
彼女の言う“英雄”は、かつて自分が夢見た“称賛される英雄”とは違っていたからだ。
アイナの純粋な信念に触れたレインは、自分が追ってきた夢の“浅さ”を悟る。
英雄になりたいと思っていた理由――それは、多くの者から褒められたいという、ちっぽけな承認欲求にすぎなかった。
そしてレインは決意する。
「俺はもう“英雄”にはならない。けれど……彼女が本当の英雄になるなら、支えたい。」
その日から、彼の物語は変わり始める。
かつて“称賛”を求めた青年が、“幸福”を理解するための旅に出る。
それが、世界に小さな火を灯す物語の始まりだった。