あらすじ

十九歳の五十嵐挑夢(いがらし いどむ)は、地下格闘技場「ボロックス」の無敗の王者。十四歳のときから非合法の賭けボクシングに身を投じ、金のためだけに殴り合いを繰り返してきた。ルールなき暴力の世界で、生きることだけを糧に拳を握っていた。だがある日、あまりに強すぎるがゆえに「賭けにならない」と見限られ、クビになる。  居場所も生活の糧も一瞬で失った五十嵐の前に現れたのは、かつてその地下リングで彼に敗れ、電撃引退をした元WBCミドル級チャンピオン・夏樹愛(なつき いとし)だった。夏樹は突然「この男を五百万円で引き取らせてほしい」と申し出る。目的は、五十嵐を世界一のボクサーへと育てあげ、自らは名トレーナーとして復帰の道を掴むこと――すなわち、“失った夢を取り戻すため”だった。  こうして始まったのは、スパルタ指導によるボクシング修行の日々。 暴力によって鍛えられた筋肉は、夏樹の手によって“スポーツとしての拳”へと再構築されていく。初めて手にした人間らしい生活、そして「ルール」と「勝利」。常に傍にいる夏樹という存在。誰にも必要とされず、誰も信じずに生きてきた五十嵐の中に、少しずつ微かな変化が芽生え始める。  一方の夏樹にも、焦りと打算があった。自身のキャリアは終わった。ならば「俺を倒した男」を世界チャンピオンに育てあげることで、子どものころからの夢だったアンディスピューテッド・チャンピオンを目指す――。あくまで“自分のため”と割り切っていたはずなのに、次第に五十嵐という若者の無垢な強さに惹かれ、揺れていく。  五十嵐はプロとして順調に勝ち進んでいく。しかし、頭痛や吐き気といったパンチドランカーの初期症状に襲われる。 予定されていた手術の前夜。かつての地下格闘技場の会長が現れ、「最後にもう一度だけ賭けボクシングに出場しろ」と命じる。出場すれば確実に身体は壊れる。プロとしての未来は絶たれる。  そんな彼に対して、夏樹が告げた言葉は―― 「その試合、俺が出る」  拳を通して生きてきたふたりの男の、青春小説。

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エブリスタ
エブリスタ2025/11/08
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