あらすじ
彼女のことを、誰も覚えていなかった。
でも、僕のカメラだけが、彼女を覚えていた。
夏の終わり、海沿いの町で起きた土砂崩れ。
その夜、白鐘ユナという少女は姿を消した。
写真部の記録係・神木レンは、彼女の存在を証明するためにシャッターを切り続ける。
けれど現像された写真には、
誰もいない教室に、微笑む“彼女”が写り込んでいた。
忘れられた人を、もう一度この世界に映し出すことはできるのか。
記録とは、過去を取り戻す行為か、それとも——。
失われた少女と、彼女を記録し続ける少年。
記憶と記録の狭間に生まれた、
儚くも美しい青春ミステリー。
世界観
舞台は海沿いの地方都市・黄瀬(きせ)。
数年前、町を襲った地震と土砂崩れで、ひとりの少女・白鐘ユナが行方不明になった。
主人公・神木レンはその出来事の“記録係”として、ボランティアで町の復興アルバムをまとめていた。
彼のカメラには、「誰も覚えていないユナの姿」が、なぜか時折写り込む——。
登場人物
■ 神木レン
17歳。内向的な記録係。
町のボランティア班で被災写真をまとめている。
「何かを失ったまま、大人になってしまう」ことへの恐怖を抱く。
彼の手帳には、“ユナに関する記録”が詳細に残っているが、誰もユナの存在を覚えていない。
■ 白鐘ユナ
失われた少女。
レンが記録していた被災ボランティアの仲間だったが、町の崩落事故で消息を絶った。
それ以降、レンの写真にはときどきユナの姿が写り込み、夜になると彼女の声が耳の奥で響く。
■ 黒瀬カリン
レンの同級生で新聞部の編集長。
町の「空白の記録」を取材しており、レンのノートに興味を持つ。
明るく理性的なようで、ユナの影に嫉妬している。
■ 笹原センセイ
写真部の顧問。飄々とした中年教師。
レンに「記録は、人を救うんじゃなく、傷跡を残すものだ」と語る。