あらすじ
ある日、名門ヘルステタリヤ公爵家の令嬢リリワースが、原因不明の高熱で床に伏した。
高慢で冷酷、誰よりも苛烈な乱暴者として知られた彼女は、三日三晩、生死の境をさまよい続ける。
そして――目覚めた彼女は、まるで別人だった。
気品はそのままに、誰に対しても優しく、言葉も態度も驚くほど柔らかい。
かつての傲慢さは影も形もなく、礼儀正しく、慎ましやかで、まるで理想の令嬢そのもの。
そして何より、瞳の奥にあったはずの“熱”が消えていた。
代わりに広がるのは、どこまでも無機質で、夜の海のように深い虚無。
人の深層を掻き乱す、恐怖想起の魔眼であった。
リリワースは静かに微笑む。
その内側で蠢くのは、全てを呑み込む狂気と、世界の理から外れたおぞましき怪物性。
英雄が無数に生まれ落ち、この世全てが大きな騒乱の渦に巻き込まれていく中、
埒外の来訪者となった令嬢は、気の向くままに、狂気の侵食を開始する。
優雅に。慈愛深く。
そして──圧倒的な異質さを隠したまま。
これは、完璧な淑女として生まれ変わった“ナニカ”が、この世界に未曾有の厄災を齎す物語。