あらすじ
眠れない夜、ふらりと立ち寄った深夜2時のコンビニ。大学浪人中の僕は、そこで奇妙な現象に遭遇する。自動ドアが開いたのに誰もいない。しかし、肉まんのショーケースを凝視する「気配」だけが確かに漂っていた。
「ねえ、肉まん半分こしない?」
ふいに聞こえた声の主は、自称・透明人間の少女だった。彼女の姿は目に見えないけれど、手渡した肉まんが空中に浮かび、湯気だけがそこに誰かがいることを証明している。
それから毎晩、深夜2時に僕たちはコンビニのイートインスペースで待ち合わせをするようになった。他愛のない会話、半分こする肉まん、そして触れることのできない彼女の体温。孤独な僕の日常は、見えない彼女のおかげで少しずつ色づいていく。
しかし、彼女が透明になったのには、ある悲しい理由が隠されていた。やがて訪れる別れの朝、僕の手には温かい肉まんの感触と、決して消えない思い出だけが残る。
姿なき君と過ごした、ひと冬の温かくて切ない青春ファンタジー。