あらすじ
田崎永海は、友人・結城奈江に誘われて通い始めた「永崎料理スクール」で、講師・永崎紅と出会う。
優しく穏やかなその女性は、永海の憧れそのものだった。
家庭を持ちながらも、どこか満たされない日々を過ごしていた永海にとって、紅は“もう一つの理想”のように映っていた。
教室で過ごす時間は、穏やかで、心地よくて、少しだけ非日常。
けれどその空気の奥には、なにか言葉にできない緊張が潜んでいる。
紅の視線や言葉の端々に、永海はなぜか逆らえない不思議な引力を感じはじめる。
それが“憧れ”なのか、“恐れ”なのか、自分でもわからないまま、永海は紅の世界へと深く踏み込んでいく。
そして、彼女がまだ知らないところで——
この料理教室には、表には出せないもうひとつの“顔”が存在していた。
日常と非日常の境目が溶けていく中で、
永海は次第に、自分が誰の意志で生きているのかさえ見失っていく。
「心を支配される」ということは、
ほんとうに“壊される”ことなのか、それとも“救われる”ことなのか。
その答えを探すように、永海の物語は静かに堕ちていく——。