あらすじ
祈りは測定される時代。
人の願いも恐怖も後悔も、すべては“祈りの残響”として記録される。
十四年前──祈りを演算するAI《Eclipsera Core》が暴走し、
ひとつの街が地図から消えた。
神蝕と呼ばれたその現象だけが、いまも国家の最深部に封じられている。
祈導庁に所属する少年・篝 黎は、
祈りの影響を一切受けない“反祈導体質(Anti-Pray)”。
祈りに満ちた世界の中で、ただ一人“心の音”を持たない異物として生きていた。
ある日、彼は旧第六区域の地下で、
光の繭に封じられた少女と出会う。
獅子の意匠を戴く、美しくも異質な存在。
名前すら忘れたその少女は、黎の手を掴み、震える声で囁く。
「……ひとりに、しないで」
彼女は覚えていない。
自分が何者だったのか──
そして、世界を災厄へ導いた“神格の核”であることも。
祈れない少年と、祈りから生まれた少女。
二人の逃走は、やがて国家と神話を巻き込む“新たな神蝕”へと繋がっていく。
これは、祈りを失った少年が、
世界そのものだった少女と紡ぐ、終末の恋と赦しの物語。