あらすじ
女探偵・水無瀬冴(36)のもとに、一人の依頼主が現れた。
橋本美鈴(42)。彼女は言った。「夫の浮気を調べてほしい」と。
冴は、美鈴の夫・健一郎を尾行し始める。
だが、そこで目にしたのは「浮気」ではなく、予想外の「優しさ」だった。
雨の中、捨て猫を抱えて走る男。
老人ホームへ通い、亡き母を偲ぶ男。
妻に「愛してる」と伝え続ける男。
冴は気づく——この男は、浮気などしていない。
それどころか、誰よりも誠実な夫だった。
では、なぜ妻は彼の浮気を疑うのか。
調査報告の場で、美鈴は告白する。
「彼の優しさが、私を殺した」
「だから、証拠を作ってほしい。彼が築いたもの、全部奪いたい」
冴は拒絶する。だが、その夜——
偶然を装い、書店で健一郎に接触してしまう。
カフェで交わされる、長い会話。
健一郎の過去。妻への想い。壊れていく結婚生活。
冴の胸に、ある感情が芽生える。
——もし、私が彼の妻だったら。