あらすじ
高校二年の春、ひょんなことから、最も敬愛する覆面作家の正体を知った俺は、彼女にある提案を持ちかける。
「お前には恋愛経験が足りない。だから、俺と疑似恋愛の契約を結んでくれ。そして、お前は、ノーベル文学賞を穫るんだ──」
彼女には、比類なき、破天荒な文学的才能がある。しかし主観に閉じ篭りすぎる性情が、その開花を妨げている。だからこの契約は、その不足を補うためのものだ。
俺と彼女の、二人だけの秘密の契約。
ずっと俺の傍にいてくれた幼なじみの彼女にも、このことは伝えていない。
きっと、俺はなにか過ちを犯したのだろう。もしかしたらこの時俺は、彼女にだけは伝えるべきだったのかもしれない。あるいは、疑似恋愛の契約などを持ちかけたのが間違いだったのか?
結果として、すべては闇に包まれ、幽霊は笑い、太陽は泣き、そして、月は隠れた。
俺は、間違っていたのだろうか。俺は罪を犯したのだろうか? これは罰だろうか?
いや、これは罪でも罰でもない。
この世に神などいないのだから。
ここにあるのは、ただの人の愚かさだけだ。