あらすじ
「貴様のような『腐敗令嬢』は王都に不要だ!」
公爵令嬢アリアは、前世の記憶を活かした「発酵・醸造」だけが生きがいの、少し変わった令嬢でした。 しかし、その趣味を「酸っぱい匂いだ」と婚約者の王太子殿下に忌避され、卒業パーティーの場で、派手な「聖女」を隣に置いた彼から婚約破棄と「北の辺境」への追放を言い渡されてしまいます。
「(北の辺境……! なんて素晴らしい響きでしょう!)」
王都の軟水と生ぬるい気候に満足できなかったアリアにとって、厳しい寒さとミネラル豊富な硬水が手に入る辺境は、むしろ最高の『仕込み』ができる夢の土地。 愛する『麹菌』だけをドレスに忍ばせ、彼女は喜んで追放を受け入れます。
辺境の廃墟でさっそく「発酵生活」を始めたアリア。 三週間かけて仕込んだ『味噌もどき』で「命のスープ」を味わっていると、氷のように美しい、しかし「生」の活力を一切感じさせない謎の男性と出会います。
「それを……私に、飲ませろ」
彼こそが、領地を守る呪いの代償で「味覚」を失い、生きる気力も魔力も枯渇しかけていた「氷の辺境伯」カシウスでした。
アリアのスープを一口飲んだ瞬間、カシウスの舌に、失われたはずの「味」が蘇ります。 「味が、する……!」 それは、彼の枯渇した魔力を湧き上がらせる、唯一の「命の味」でした。
「頼む、君の作ったあの『茶色いスープ』がないと、私は戦えない。君ごと私の城に来てくれ」
「腐敗」と捨てられた令嬢の地味な才能が、最強の辺境伯の「生きる意味」となる。 一方、アリアという「本物の活力源」を失った王都では、謎の「気力減退病」が蔓延し始めており……?
追放令嬢が、発酵と菌への愛だけで、氷の辺境伯様の胃袋と魔力(と心)を掴み取り、溺愛されるまでを描く、大逆転・発酵グルメロマンス!