あらすじ

江戸時代、「不作のない村」との噂が広まっていた翠光村──。その村に、隣村から移住を試みて訪れた忠志と涼の二人は、噂通りの立派な稲を前に高揚と違和感を覚えた。村民から不審がられながらも、村長である銀子という老婆から移住の許諾を得、さらに豊作の秘密が山頂に存在する奇怪な「大樹」であることが明かされる。  忠志は、翠光村で神と崇められている大樹に不信感を抱き、秘密を暴こうと独自に調査を進め、涼は風習にのっとり、村の生活に馴染んでいくが、その差異は親子間にすれ違いを生み始めたのだった。  一方、人間界と対をなす「地中界」を生きる生物「コンク」。彼らは、無垢に土を掘り進めるだけの、大きさ数ミリ程度の非常に稚拙な生物である。ミミズや土竜に突き飛ばされ、不遇な目に遭わされようとも、「親」の目的のために、ひたすらに進み続ける。  稚拙だが、地中の生物に天敵が存在せず、さらに不死の存在であり、実に平穏な生活を送ることができる生物であった。しかし、そんな平和な世界に生きる彼らに、未曾有の危機が迫る。  地上でも、安泰が保障された翠光村に危機が訪れようとしていた。神として崇められていた大樹が、突如として枯れたのだ。その原因として、流れ者であった忠志と涼に村民の疑いの目が向く。この一件を境に、翠光村は狂い始めていくこととなる。  ──時が経ち、現代の日本。高校二年生の透は、とあるボランティアに参加していた。それは、透が生まれる以前、郊外に突如として現れた「大樹」の調査だった。調査を進めると、その大樹が、かつて翠光村という村に存在していたという事実を掴む。  そんな折、ボランティアを通して仲良くなった光代という老女が原因不明の血栓症で亡くなった。死に目に会った涼は、その時の出来事に違和感を覚えた。そして、その違和感に呼応するように、光代と同じ病で亡くなる人が急増し、日本人は減少の一途を辿り始めたのだった。  江戸時代の翠光村の大樹は、一体どうなったのか。そして、現代に現れた大樹と血栓症は、どのような因果関係があるのだろうか──。  そして、この奇怪な大樹とは一体──。

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カクヨム2025/11/17
  • 現在の作品地統べり(じすべり)