あらすじ
死にたがりの命綱をいつの間にか握っていた。
自分がこれを手放せばおそらくあの人は死ぬのだろう。
死んで欲しくなかったからその縄を離さなかった。
だけど、あの人がもう生きていたくないというのであれば自分にこれを握り続ける資格はない。
生が苦しいのは知っている、死がある意味救済となり得ることも知っていた。
だから、心の底からそれを望んでいるのであれば、自分だけは笑って見送らなければならない。
だけどどうしてもその縄を手放せなかった。
どうすれば、そう思った私の視界の端に先が尖った石がうつった。
それを左手でしっかりと握り締めて、振り下ろす。
痛みに笑う、こんなに痛いのに縄を手放せない自分に笑う。
きっと抉って抉って千切れてしまったとしても、自分は石を放り捨てて左手でこの縄を掴み続けるのだろう。
そうしたら次はきっと左手を噛みちぎって、それでもきっと縄は離せない。
だからきっとこれは持久戦で、緩やかな自殺になるのだろう。
不甲斐ないことに自分は死んでしまうその時まで、あの人のことを手放せないのだ。