あらすじ

物書きとして静かな世界を生きる青年、相葉湊。彼にとって世界は、音の要素が欠落した一枚の「動く絵画」だった。言葉だけが唯一、彼と世界を繋ぐ確かな音。 そんな彼が、雨上がりの午後に迷い込んだのは、『月のクジラ』という名の古いレコード店。音の化石が眠る、彼にとって最も縁遠い場所。 そこで湊は、店員である月島詩織と出会う。耳が聴こえないことを伝えて始まる二人のコミュニケーションは、筆談。彼女は、聴こえないチェロの音色を「あなたの書く物語に、何かをくれる」と語り、クジラの唄を「満月の光みたいな音」と表現する。詩織の言葉は、まるで魔法のようだった。 「この音、あなたに、聴かせてあげたいな」 詩織のまっすぐな願いが込められた言葉は、湊の世界を覆っていた薄い膜を破っていく。音のない静寂の中に生まれた、確かな「響き」。それは心で聴くメロディーだった。 プレーヤーを持たない湊は、詩織から託されたチェロのレコードを抱え、新しい物語『月のクジラ』を書き始める。 これは、聴こえないからこそ生まれた、希望の旋律を探す、静かで美しい感動作。言葉が音となり、心の底で響きわたる「聴く」ことの新しいかたちを見つける物語。

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小説を読もう2025/11/17
  • 現在の作品もしも音が聴こえたなら