あらすじ
中世末期、一人の産婆が「合理的すぎた」ために魔女として火刑台に送られた。だが、彼女が遺した「観察記録」は、一冊の帳面として密かに受け継がれる。
それは、信仰と現実に葛藤する修道士の「研究」となり、全てを冷笑する傭兵の「切り札」となり、やがて印刷術を知る法律家の「告発」へと姿を変えていく。
一方、同じ時代、「悪魔は実在する」という完璧な理論が『魔女に与える鉄槌』として出版され、狂気はシステム化された。秩序を求める裁判官、金儲けを企む詐欺師、魂の救済を信じる審問官。それぞれの「正義」が、無実の人々を火刑台へと送る。
これは、絶望的な時代に、命懸けで「知のバトン」を繋いだ者たちと、それを追い詰める「理論武装した狂気」との、二百年にわたる戦いの記録である。