あらすじ
天宮結衣(17)。
幼い頃に原因不明の高熱で聴覚を失った少女。しかし彼女には、誰も知らない秘密がある。
――五歳まで“音”が聞こえていた頃の、鮮やかすぎる「記憶」。
――そして、音を“色”と“振動”として感じ取る、特異な感覚。
その感性は、彼女の中で独自の音楽世界を築き上げ、やがて匿名作曲家「Silence」としてネット上で注目を集めることになる。
だがある日、軽音楽部のメンバーが偶然、彼女の正体を知ってしまう。
天真爛漫なボーカリスト・立花美空は興奮気味に叫ぶ。
「結衣ちゃんの曲を、私に歌わせてほしい!」
興味本位ではない、まっすぐな眼差し。
けれど、音が聞こえない自分が音楽を“作る”ことに、結衣はどこか後ろめたさを感じていた。
仲間との衝突、噛み合わないセッション、伝わらない気持ち。
しかし、彼女たちはあきらめなかった。
色で刻むリズム。
振動で追うビート。
表情と手話で伝える想い。
――耳が聞こえなくても、音楽は、作れる。
音のない世界で見つけた新しい調べは、やがて仲間たちの運命を変えていく。
学園祭のステージで結衣が見るのは、かつて聞こえていた“音の記憶”ではなく――
今、胸の奥で確かに響いている「心の音」。
これは、ひとりの少女が“音のない世界”から“音楽の未来”を創り出す、青春と再生の物語。