あらすじ
高校三年、文化祭の最終日。突然の激しい雨が、すべての終わりを告げるように降り注いでいました。主人公である「私」は、片思いの相手であるクラスの人気者、加藤くんへの報われない恋心を雨と共に洗い流したいと思いながら、校庭の隅で小道具の回収をしていました。
加藤くんは体育祭で足を捻挫し、松葉杖姿。そんな彼が、雨の中で傘を持たずに校門の方をじっと見つめて立ち尽くしているのを目撃します。「なんでだよ、バカ…」と心の中で呟きながらも、臆病な私は声をかける勇気が出ません。彼はいつも遠くから見つめるだけの存在だったからです。
しかし、「もしもこのまま彼が風邪をひいたら?」という後悔の念が、私の背中を押しました。これは恋じゃない、人助けだ——そう自分に言い聞かせ、私は意を決して彼のもとへ走ります。
「あの!これ、使ってください!私はすぐそこなので大丈夫です!」
差し出したのは、100円ショップの安っぽいビニール傘。振り返った加藤くんは驚きと戸惑いを見せましたが、すぐに「ありがとう」と微笑みました。その声の響きは、私の心臓を一気に熱くし、二人の運命の歯車を回し始めます。
もしもあの時、私が勇気を出さなければ、私たちは永遠に交わることのないクラスメイトのままだったでしょう。この小さな「もしも」の決断が、現在の私たちを作ったのです。
時は流れ、数年後。あの日の「もしも」のおかげで、私たちは夫婦になっていました。リビングのソファでくつろぎながら、私は隣で寝息を立てる夫、加藤くんにそっと問いかけます。
「ねぇ、あの時傘を渡さなかったら、私たちどうなってたと思う?」
夫は寝ぼけながらも、私の手を握りしめ、ロマンチックな響きで応えます。
「もしもあの時、傘がなくても、俺が君を探し出してたよ」
胸が締め付けられるような甘いセリフに、思わず涙したわたし。