あらすじ
信濃国の御和郷には翡翠色の深い湖が横たわる。太古より湖の底には人魚が住むと言い伝えられ、ほとりには水神を祀る御和大社が建てられた。江戸時代になると街道ができたこともあり、多くの参詣者で賑わうようになり、宿場町である汐蔦宿は栄えた。
時は明治。
12歳の時に母を失った朝日奈御津女は、三つ下の弟の面倒を見つつ、生家である老舗旅籠屋、旭屋を番頭や仲居たちに支えられながら、なんとか盛り立てようとしている。実直で控えめな娘だが、美しい緑髪と青白い肌がどことなく普通の娘ではないように感じさせる。
そんな御津女は元脇本陣の末息子、穂信に恋をする。奥手がゆえににっちもさっちも行かぬ恋をする中、御津女は母が湖底で生きていることを知る。
これは人魚の娘のままならぬ恋。