あらすじ
政財界に強い影響力を持った大資産家・大賀征一は、成功の裏で多くの人間を切り捨て、恨みと妬みを買い続けてきた。老いと病に倒れ、孤独な病室で臨終を迎えようとしたその瞬間、彼は深く後悔し、胸の内でつぶやく──
「もしも……あの時、やり直せたなら」
その思いと共に意識を失った大賀は、気づけば四十年前の“起業したばかりの若き自分”へと戻っていた。
戸惑いながらも、彼は二度目の人生で決意する。
もう他者を踏みにじらない。人を育て、社会に尽くす生き方をする—— と。
大賀は新人教育制度の改革や、困窮者・前科者の社会復帰支援に力を注ぎ、多くの人々を支えていく。その過程で、誠実な新卒秘書・深山遥と出会い、彼女の存在は大賀にとって“人生をやり直す意味”そのものとなっていった。
しかし、社会復帰支援に参加した前科者の一人・桐生が劣等感と被害意識に囚われ、暴走する。
「俺たちを馬鹿にするな!」
その歪んだ怒りと刃は、大賀の体を貫いた。
血に染まり、崩れ落ちる大賀。
死の間際、彼は静かに受け入れる。
これはかつての人生で奪ってきた者たちからの“当然の報い”だ、と。
泣きながら抱きとめる遥の声が震える。
「社長……私はあなたに救われたんです。
生きる価値を教えてもらったんです……!」
その言葉が、大賀にとって最後の赦しとなった。
二度目の人生は短かった。
だが、彼は確かに誰かを救い、誰かに愛された。
“もしも、あの時”に手放してしまったものの重さを知り、
ようやく一人の人間として生ききることができたのだった。