あらすじ
広曽木 真(ひろそぎ・まこと)は東京の大学で哲学を学ぶ二年生。
知的で礼儀正しく、抽象概念の整理が得意。
しかし「好き」という感情だけはどうしても理解できず、
恋愛経験は多いのに、いつも“心だけ置いていかれる”ような虚無が残っていた。
ある春の日、同じ講義で見かけていた少女――
大都乃 未唯(おおとの・みい)に、真は激しく惹かれる。
未唯はカント倫理学を専攻する苦学生で、感情の輪郭がうまく掴めないまま生きており、
「好きって何?」
「幸福って何?」
「感情は信じていいの?」
という問いを胸に抱えていた。
思いつめた真は、好意を隠せず__
授業終わりの廊下で突然告白する。
しかし返ってきたのは、静かで残酷な言葉だった。
「ごめんね広曽木くん。
私、“好き”がわからないの」
フラれたはずなのに、なぜか距離が近くなる二人。
真は未唯の哲学的な誠実さに惹かれ、
未唯は真の「好きの定義」をめぐる徹底的な探究心に心を動かされていく。
「カントの義務論に従うって、他律じゃないのか?」
「違うよ。
カントの義務論は“例”じゃなくて、“自分で普遍的義務を立てる”ことが自律なんだよ」
未唯の言葉に触れたとき、
真の中で「好きの概念」が初めて揺れ動き始める。
二人は毎日のように議論を交わすようになり、
“好きとは何か”という問いは、
やがて“自分の義務とは何か”を考える第二部へとつながっていく。
恋愛ではなく、
定義から始まる関係の物語。
自律と愛の輪郭が交差する、
カント倫理学的・青春哲学ロマンス。