あらすじ
『絶対勝利なのに追放されました』
私は沈黙していた。
剣を振らず、魔法も撃たず、
ただそこに立っていただけ。
それでいいと思っていた。
誰かの勝利の影で、
息を潜めていられるなら。
でもあなたたちは言った。
「役立たず」
「何もしていない」
「いらない」
――笑ってしまった。
だって私は、
ずっと願ってきたのだ。
誰かのために、勝てる世界を。
誰も傷つかず、生きられる戦場を。
私は戦ったことはない。
私は派手な力もない。
ただ、私がそこにいるだけで、
風向きが変わり、
矢は外れ、
剣は鈍り、
死ぬはずの仲間が、息をする。
それを奇跡とは呼ばなかった。
それが私の役目だったから。
けれど、追放された日。
胸の奥でひとつ、音がした。
――ああ。
ようやく終わったのだ、と。
私は役立たずではなかった。
ただ、
「理解されなかった」だけ。
世界は知っていた。
風は知っていた。
大地は知っていた。
私の歩く場所に花が咲き、
影が薄れ、
剣よりも強い静けさが芽吹くことを。
だから今、私は歩き出す。
求められる場所へ。
必要とされる声の方へ。
――私を、見捨てなかった世界の方へ。
そして思う。
追放は終わりではない。
追放は宣告ではない。
追放は――
「ここではない」
という世界からの導き。
私はもう戻らない。
憎むためでも、見返すためでもなく。
ただ、誇りのために。
私は勝利そのもの。
存在するだけで、世界を傾ける。
だから今日も静かに呟く。
「私の価値は、私が決める。」
そして、振り返らず進む。
この世界が、
私を必要としているなら。
私もまた――
この世界を必要とするために。