あらすじ
ドアが大きく開いて、誰かが立っていた。目深に被ったフード。背中から入ってくる暮れかかった光に顔は黒く塗りつぶされて分からない。逆光に照らされた輪郭からは、小柄な体に似合わず無駄のない、しなやかな筋肉が全身に付いているのだけが感じられる。大きく一歩、入ってきて言った。
「ほら、取り返してきたぜラット。キラ、リラ、今日の晩ご飯だ。」
開いた方の手で無造作にフードを後ろへと跳ね上げる。サラッと柔らかな癖のない髪が揺れ、黒い切れ長の瞳が部屋の中を見回すと、顔の動きに合わせて右目にはめた鈍色のゴーグルの先が光に反射した。そこにいた全員の中にチラッとかすめた疑問はしかし、キラの一言であっという間に忘れられた。